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海について

作家:

坂口恭平

会期:

2022年4月30日(土) ー 5月22日(日) 火〜木曜日定休

*ゴールデンウィーク中は休まず営業いたします。

海について

僕は鬱になると、いつも不思議なことに海にいる。
幻覚ってわけじゃなくて、キツすぎて寝てられなくなるので、どうにか体を起こして、何かを書こうとする。
小説なのかなんなのかわからないけど、頭から溢れているものはあるので、それをどうにか書いて外に出そうとする。
書いている間は麻痺しているので、苦しまずに済む。
そんなわけで僕はいつも鬱の時が実は一番書いている。
寝ている時以外は書いている。そうやって死のうとするのを避けている。
書くときだけ、書いている風景の中にいる。
そこがいつも海なのだ。
海で過ごした記憶はないのに、鬱の時はいつも海にいるので変な感じだ。

今年に入って、また苦しくなると、海の文章が溢れてくるのだが、
今度はさらに海の絵、海の音楽まで溢れてくるようになった。
鬱の時にだけ姿をあらわす記憶のない海が、
さらに絵になり音にもなってどんどん満ちてきているのを感じる。
今ではそれが僕を助けている。
今では鬱の時だけじゃなくて、いつもその海がここにある。

坂口恭平

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