作家:
山田康平 / Nerhol / Pius Fox
会期:
4/12(土) - 5/5(日) 火〜木曜定休
京都での大学院生活を思い出す。
二年間、制作に没頭する日々を過ごしていたが、ふとした時間に外へ出て、カフェの窓から遠くを眺めることがあった。
ある日、静かに雨が降るなか、私は山を見つめながら、雨と地面の関係について考えていた。雨は地表に落ち、一部は弾かれ、一部は吸収され、地中深くへと沈み込む。見えなくなったものは決して消えたわけではなく、時間とともに変質し、別のかたちで表れることがある。
今回の展覧会では、NerholとPius Foxを迎え、それぞれの作品とともに「吸収」というテーマを探る。Nerholの作品には、物質の積層や時間の蓄積が刻まれている。昨年、千葉市美術館で見た作品は、彫刻的なアプローチを用いりながらも、湿度のような気配を孕み、絵画や写真とも交差する要素を持っていた。その多層的な構造は、物質がどのように沈み込み、そして別のかたちで顕れるのかを問いかける。
Pius Foxの作品には、長く関心を寄せてきた。学生時代から彼の作品を見続けているが、彼の抽象表現における思考は、自分の考えと重なる部分が多い。視覚では捉えられないものを描くこと、時間の痕跡を内包すること。最近見た個展では、古い石造の像をモチーフにしながら、光に関心を寄せていた。また、パステルの作品には油彩とは異なる質感があり、そこに吸い込まれるような気配を感じた。
吸収とは、単なる消失ではない。水を吸収する土と、弾く石。物質の性質によって、何が取り込まれ、何が拒まれるのかが決まる。
吸収されたものはどこへ向かうのか。見えなくなったものは、どのようにして存在し続けるのか。その問いに向き合うことで、新たな視点が立ち上がるかもしれない。
山田康平
First image: © Kohei Yamada. Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi